ご葬儀等が落ち着きますと、故人を偲んで、ご家族のなかで、お写真や想い出の品を「形見分け」したりすることと思います。

そして…

ご葬儀代金・医療費の精算、死亡保険金の請求、相続財産の手続きといった具合に進めていくことになると思います。

その際、「遺言書」が無いことが判明した場合には、お亡くなりになった方=被相続人が、ご自身の財産の分割に関してどうのようなお考えをもっていたのか、という明確な意思の確認ができませんから、原則、法定相続分(民法第900条)による遺産分割となります。

但し、現実的には、現金や預貯金のように、キレイに分割できる財産だけでなく、法定相続人の一人がこれからも住み続けるであろう、不動産があったり、農家が相続しなければ有効活用ができない「農地」があるケースなどでは、きっちり法定相続分どおりに分割することが難しいこともありますので、こうした場合には、法定相続人全員による意見の調整、すなわち遺産分割の話し合い=遺産分割協議を行うことになります。

この話し合いの結果を、法定相続人全員の実印を押印し、全員の印鑑証明書を添えた書面として、「遺産分割協議書」という書面を作成します。

なお、法定相続人全員の意見が一致した場合には、法定相続分として規定している割合でなくても、相続財産を分割することができます。

法定相続分よりも、法定相続人全員の「意思」の方が優先される、というのが現在の有力な考え方となっているのです。

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その意思を、間違いのない、確固とした証明として残すために遺産分割協議書を作成し、不動産の名義変更などの手続きの際に、提示することになるのですが、当然のことながら、詐欺や強迫によって実印を押印してしまった場合などは、当人の本意ではありませんから、取り消すことができます(民法第96条)。

また、被相続人が死亡する直前に、婚姻したり、養子縁組を行って、突如として相続人となり、遺産分割協議に加わった者について、その後の裁判の結果、婚姻や養子縁組が無効となった場合には、この遺産分割協議書も無効になります。

相続人でない者が加わった遺産分割協議書は無効なので、婚姻や養子縁組を無効とされた人物を除いて、真の法定相続人によって、新たに作成することになるのです。

ちなみに…

このような婚姻については、以前から、お互いに夫婦になる必要がある関係だったのかどうか、二人で夫婦同然の暮らしをしていたかどうか、などが重要になってきますので、こうした状況が存在せず、婚姻届を提出しただけ、という場合は、婚姻無効確認訴訟にて、婚姻の無効を主張することになります。

 

 行政書士 角田(ツノダ) 光浩

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